「中耳炎」といえば・・・「急性中耳炎」が真っ先に思い浮かぶ方が多いとおもいます。急性中耳炎は耳管(耳抜きのための耳と鼻をつなく管)からばい菌(細菌)が入ることで起こります。痛くて、鼓膜が赤く腫れて、耳だれが出て、熱も出て・・・・というものです。黄色い汚い鼻水が出ている時には急性中耳炎になりやすい状態です。
2歳未満のお子さんや保育園に行かれているお子さんでは特に急性中耳炎を起こしやすく、重症化しやすいと言われています。急性中耳炎は適切な抗生剤の内服で症状はよくなります。しかし急性中耳炎がよくなる途中で中耳に水がたまる「滲出性中耳炎」になることがあります。滲出性中耳炎はあまり聞きなれない病気かもしれませんが、黄色い鼻水が出ているお子さんでは誰しも発症する危険性があり、乳幼児〜小児では非常に発症頻度の高い中耳炎の一つです。
私は勤務医時代にこの滲出性中耳炎に対する治療を専門分野としてきました。ここではこの滲出性中耳炎について説明します。
「鼓膜に穴がなく、耳痛や発熱などの急性炎症症状を伴わずに中耳に滲出液がたまる」中耳炎です。滲出液とは体の外から入った水ではなく、中耳粘膜の炎症によって粘膜から染み出てきた体液です。主に乳幼児〜小児で多く見られる病気です。
① 副鼻腔炎、アデノイド(鼻の奥にある扁桃腺の仲間)の細菌感染、アレルギー性鼻炎
② 耳管から中耳への細菌感染
③ 耳管機能障害(アデノイド増殖症による耳管の狭窄や閉鎖など)
④ 急性中耳炎後
などです。
急性中耳炎の様な痛みはありません。『聞こえが悪い』ことが主な症状なので、幼児・小児では自覚症状を訴える事が少なく発見が遅くなる事があります。家庭においては、「テレビのボリュームが大きい」「聞き返しが多い」「呼んでも返事をしない」「耳に頻繁に手を持っていく」「耳の中でガサガサ音がする」などがあれば滲出性中耳炎を疑います。「夜泣き」や「落ち着きのなさ」の原因となることもあると言われています。
鼓膜の所見、鼓膜の動きをみる検査、可能であれば聴力検査で評価します。
①保存療法
抗生剤や滲出液の排泄を助ける薬を内服します。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎がある場合にはこの治療も必要です。耳管を通して中耳を換気する治療(通気治療)を行うこともあります。
②鼓膜切開
内服治療でよくならない時には鼓膜切開を行い、滲出液を吸い取ります。
③手術
鼓膜切開を行ってもよくならない時には、中耳の換気を目的としたチューブを鼓膜に入れます。チューブは1年半〜2年間程度入れておくことが望ましいです。
多くは小学校高学年までに自然によくなってきます。しかし耳の発達が一番活発な時期に滲出性中耳炎が長引いてしまうと、耳の発達を妨げてしまいます。耳がきちんと発達しないと、癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎といったよりひどい中耳炎に移行してしまい、大人になってからも中耳炎で苦労してしまう可能性があります。